ノクターンの連作を残してくれたホイッスラー先生、ありがとう

  • Posted on: 2015年2月11日
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本日の行った

展覧会名 ホイッスラー展
会場 横浜美術館
開催期間 2014/12/6(Sat)-2015/3/1(Sun)
展示作家 ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
主催 横浜美術館、NHK、NHKプロモーション

行ってきました。
ホイッスラー展。
版画作品や油彩作品を「人物画」「風景画」「ジャポニスム」などといった切り口で紹介しています。
彼の作品を俯瞰できる良い展覧会でした。

街の川辺や海辺を描いた風景画など、素晴らしかったです。
(おっさんと船をモノクロで描くだけでエモいからすごい。)
が、なんといっても「ノクターン」シリーズにはグッときました。

本投稿では、以下内容で特にノクターンの鑑賞について言及したいと思います。

  • 画家の一生
  • ノクターンシリーズ
  • ノクターンと音楽

画家の一生

なかなかツッコミどころのある一生です。1

  • 父は鉄道技師
  • 幼少からアメリカ→ロシア→イギリスと回ってグローバル力を磨く。
  • 17歳 陸軍士官学校(まさかの陸軍)
  • 20歳 士官学校を成績不信で退学(やはり嫌だったか)最初のキャリアは測量士で、そこで版画技法を体得。
  • 21歳 一年で測量士辞職(光の速度で脱社畜)
  • 22歳 画家人生スタート
  • 20代から30代は、絵画を学び、画商と会い、官展に出品。金持ちのお抱え画家になったり、ジャポニスムに目覚めたり、様々な同時代の画家とつるんだり

20代からそこそこちゃんとした評価を受け、同時代に受容されています。
ノクターンもシリーズスタート。
しかし30代半ばで事件。

  • 34歳 批評家に作品をジョン・ラスキンにディスられ、激怒。訴訟をおこす。
  • 35歳 裁判勝訴するも、費用がかさんで破産。

とはいえ、この訴訟は世間の注目を集め、結果として画家の後世の評価を高める結果になりました。
晩年にかけても着実に評価を高め、絵も売れ、金賞だの勲章だのもらいまくり、かなり順風満帆にだったように見えます。

脱社畜をして画家になり、世間のディスりや訴訟を乗り越えて、熱意と実力で自己実現をした男の一生という感じです。

ノクターンシリーズ

一貫したスタイルで描かれる「ノクターン」というタイトルを冠した作品群。
本展覧会でも、版画と油彩あわせて9点展示されていました。
作品の年代は散らばっていますが、一貫したスタイルで描かれます。

ホイッスラー『ノクターン:青と金色』、1872-75年。 油彩・カンヴァス、68.3 x 51.2 cm、テート美術館蔵。

ホイッスラー『ノクターン:青と金色』、1872-75年。
油彩・カンヴァス、68.3 x 51.2 cm、テート美術館蔵。

ホイッスラー『青と銀色のノクターン』、1872-78年。 油彩・カンヴァス、44.5 x 61 cm、イェール英国芸術センター蔵。

ホイッスラー『青と銀色のノクターン』、1872-78年。
油彩・カンヴァス、44.5 x 61 cm、イェール英国芸術センター蔵。

夜を思わせる濃紺、黒の暗い色調。
濃淡だけなのに、水面と水平線がはっきりわかる。
場所は、街の水辺、川や海のほとり。
おぼろな輪郭でぼんやり見える建物、船、人。
そして必ず描かれるのは微かな光。

孤独、悲しみ、そしてかすかな希望。
言葉を超えて静かな気持ちにさせ、見る人と感情の機微を共感させる力がある絵画だと思います。

本展覧会では展示されなかった他のノクターンも素晴らしいです。
画像検索すると、こんな感じです。
人類の宝です。(盛った)

浮世絵を意識した構図や色彩も共感を呼ぶ一つの要素でしょう。
ラスキンにディスられたことでシリーズ中最も有名な『黒と金色のノクターン:落下する花火』は展覧会出品はなくキャプションのみで説明されていました。残念。

ノクターンと音楽

ノクターンは音楽の1つのコンポジションである「夜想曲」から来ています。
品のあるピアノの独奏であることが多く、静かな夜にミラクルフィットします。

ショパンの『ノクターン』

エリック・サティの『ノクターン』

有名なショパンも良いですが、サティやリストのノクターンも存在してくれてありがとうと言うしかない素晴らしい楽曲です。
(ノクターンをまとめるという非常に仕事のできる方、いました。)

定かではないですが、ホイッスラーはショパンのノクターンを聴いたでしょう。
ドビュッシーはホイッスラーの絵をみて、管弦楽のノクターンを作曲しました。

絵画と音楽をあわせて鑑賞すると、それぞれ理想的な形で相互説明している気がします。
そして安眠できそう。

ホイッスラーは以下のように自身の作品にコメントしました。

ノクターンという言葉を使用することによって、芸術的な好奇心だけを表そうとしているのです。…中略…ノクターンはまず、線や形、そして色のアレンジメントなのです。2

最後に

私は内向的で繊細(コミュ力低め)なクラスタに属します。
だからか、もの言わぬ図像や物体が意味を持って迫ってくることに心惹かれます。
今回見たホイッスラーのノクターンの作品群やそこから連想される音楽から生きる活力や生の素晴らしさを見いだせる気がします。

私はワイングラス片手のイケてるパーリートークはできませんが、絵画鑑賞と感想の共有はできますので、これからも粛々と続けたいと思います。

陽気なパーリーに出かけるのも良いですが、ノクターンを聞きながらホイッスラーの鑑賞へと出かけてみるのはいかがでしょうか。
精神的にリッチな体験です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考とオススメ

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  1. 展覧会図録のホイッスラー関連年譜を参考にした。小野文子監修『ホイッスラー展』、NHK/NHKプロモーション、2014年出版。 []
  2. 前掲書『ホイッスラー展』129ページより引用 []