メディア芸術祭2014のアート部門がなにやら世知辛い

  • Posted on: 2015年2月5日
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本日の行った

展覧会名 第18回文化庁メディア芸術祭
会場 国立新美術館
開催期間 2015/2/4(Wed)-2/15(Sun)
主催 文化庁メディア芸術祭実行委員会

巡ってきましたね、今年もメディア芸術祭の季節が。

かつて大学で美術史を専攻し、WEBというメディアインフラでご飯を頂いている私にとっては高ぶらないわけがありません。
特にアート部門の作品群を楽しみに、吸い込まれるように初日来場を果たしました。

例年通りの期待を裏切らない素晴らしい受賞作品の数々でした。
しかし、アート部門を鑑賞した中でどこかひっかかる部分もあったのも事実です。
そんな心境を、WEBの大海にささやかながらコメントを残したいと思います。

ひとまず心に残った素晴らしい作品を2つ選んで、見どころと感想をご紹介します。

「センシング・ストリームズ」(坂本龍一/真鍋大度)

第一線で活躍するスターアーティストの共演です。(作品紹介ページはこちら
見えもしない聞こえもしない電磁波という対象をセンシングし音にし映像にしています。

目に見えない電磁波を可視化・可聴化するというコンセプトも詩的でかっこいいのですが、何より4K Viewingの画面の綺麗さが印象的でした。
解像度4,160×2,184、画面の大きさは8×4.2m(幅×高さ)とのこと。
真鍋氏が制作したCGアニメーションも繊細で美しいのですが、ソニーの本気感あふれるディスプレイによってその魅力が何倍も引き出されていました。
むしろ本作品以外に4K Viewingのスペックの本領を引き出せるものが出てくるのか不安です。

「Temps mort / Idle Times – dinner scene」(Alex VERHAEST)

Temps Mort – trailer from Alex Verhaest on Vimeo.

写実的な油彩画「風」のCGの画面群です。
ルネサンスから続く肖像画、静物画の描かれ方を踏襲しています。
同時に現代的なモチーフ(妊婦とかスマホとか)を描き込み、繊細かつどこか不気味ななアニメーションを加えています。
特に北方系の肖像画や静物画は静けさと不気味さが醸しだされていますが、その系譜を発展させ協調することに成功しています。

複数の画面の配置の仕方にも演出の妙を感じます。
登場人物(作品解説によると家族)が全員集合している画面を中央に配置し、肖像画としてひとりずつ収めた画面を左手に複数、静物画の画面が右手に複数並べています。
まるで美術館です。

さらに観者が電話を利用して作中の人物と話せるという仕掛けも。
現実とのつながりを持たせ、絵(CG)であることの虚構っぽさを曖昧にします。
過去の美術作品とのつながりを巧みに利用しつつ、時間軸や現実とのつながりを持たせることに成功していて、何重にも楽しめる味わい深い作品となっています。

他に毎年に違わずおもしろい作品が多く展示され非常に楽しめました。
その一方なんだか消化しきれず心にひっかかった点も、同じく2点あります。
日本の作品が少ないことと、大賞が出なかったことです。

日本の作品が少ない

メディア芸術祭は2013年9月13日から2014年9月2日に完成・または発表されたという条件のみで、海外作品の応募も受け付けています。
日本の省庁が主催するからといって、海外作品を受け付けない理由は無いのでしょう。
応募作品総数3,853作品のうち、1,818作品が海外であり、半数近くを占めるほどです。1
アート部門では、受賞作品53点のうち、たった14作品だけが日本人作家による作品でした。2
日本の芸術制作の裾野の広がりに物足りなさあるとも読み取れます。

アート部門の大賞不出

大賞なし。
例年は出いている大賞が出なかったことを単純に解釈すると、今年はイマイチだったということになります。
アート界は厳しいなー世知辛いんだなーと思います。
とはいえ、審査講評での審査員のコメントは確かに納得感のあるものでした。

とくに岡部あおみ氏のコメントは簡潔だけど示唆に富み秀逸だったので、引用させていただきます。

今回の優秀賞の作品群はみな大賞にふさわしい高度な創造的クオリティを示している。しかし、単純に社会的批評性と、豊かな造形的完成度のパラメータで見る場合、どちらかの極みのポールに振れかねない。いつかその両者が融合し、消費にくみすることのない、未来へのメッセージを伝える作品と出会えることを夢見ている。
最先端の創造的実験と造形には胸が踊るが、同時に各人の批評性を促し、劣化し続け世界環境の変化を食い止めようとする息の長い鋭意も精神を高揚させてくれるからである。素晴らしい現代芸術こそ未来への比類なき心の糧だと思う。3

理想論ではあるものの、日常のニュースからも伝わる歪みの深いこの世界にとっては、未来へのメッセージ性も必要であることは私も同意です。
アートが社会に一石を投じる一つの手段であるということも完全に同意です。

…とかいろいろ考える体験になりました。
会期はわずかですが是非足を運んで色々思索を深めてみてはいかがでしょうか。
空いている平日昼の来場がオススメです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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  1. 公式ページ応募概況より。 []
  2. 公式ページ受賞作品情報>アート部門より。 []
  3. 会場販売の受賞作品集より引用した。文化庁メディア芸術祭実行委員会発行『平成26年度 第18回 文化庁メディア芸術祭  受賞作品集』、2015年。 []