童心こじらせぐあいが非常に良い感じな野口哲哉展

  • Posted on: 2014年3月30日
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本日の行った

展覧会名 野口哲哉展 野口哲哉の武者分類図鑑
会場 練馬区立美術館
開催期間 2014/2/6(Sat)-4/6(Sun)
展示作家 野口哲哉
主催 練馬区立美術館、朝日新聞社

野口哲哉の展覧会に行ってきました。
「現代アート」や「現代工芸」に属するのですが、堅苦しさは一切なし。
超絶技巧であるはずがそれを感じさせないゆるさ。
昨今のゆるキャラにブームもびっくりな、ねらいすまされたマヌケ感がなんとも気持ちいい。

変化球だけど完全に欲しかった球!って感じでファンになりました。
率直な感想はこんな感じですが、もう少し深堀りして、彼の作品の魅力「こじらせた童心」について書いていきたいと思います。
展覧会の概要は産経新聞でも紹介されておりました。

制作のモチベーション=「童心」

作品のモチーフは、架空のサムライの姿。
SFと戦国武将とジョークがブレンドされたような彫刻と絵画がこの作家の表現様式です。

展覧会の中盤に、モチーフの由来であろう作家の少年時代の蒐集物もあわせて展示されており、作家の幼いころの好きだったものが紹介されておりました。
それは、戦隊モノ、ロボット、侍といった男の子が誰しもがハマったであろう少年時代の「定番」の、おもちゃや雑誌の切り抜き。

幼いころの熱中したものが大人になっても創作活動の原動力になっているそうです。
つまり、少年時代に熱中したものをそのまま大人になっても追求し続け、作家としての再解釈の果てにアツイ作品群ができたわけです。
「これめっちゃ好きやねん!」みたいな作家のポジティブな制作の動機がうかがい知れます。

芸を駆使した表現=「こじらせ」

ディテールに凝りまくった鎧武者のフィギュアのような彫像。
こんなんいたらクソ笑うわ的な妄想上の武者の絵画。

展覧会のキャプションや解説資料も作家自身で作成しています。
そのキャプションは学芸員が書いたような文体をしつつも完全な架空の話です。
鑑賞者とのコミュニケーションの仕方も設計し作品を活かす優れたアイディアです。

また、作品の様式も大和絵や讃が入った禅画の方法論も踏襲して、あたかも武士の時代に作られたものであるかのように擬しています。
シミ・汚れといった古い絵画が持つ経年変化をも巧みに再現して、にくいくらい「歴史資料っぽさ」をだしています。

しかし、ディテールの表現力といった超絶技巧を有しているにもかかわらず、それが技巧のための技巧になっておらず、その技は作家のユーモアやジョークのためのただの表現手段としてのみ用いられてます。
好きなものを楽しんで制作して、世の中に価値提供するというアーティストの本来あるべきマインドを持っているように感じれます。

少年時代に好きだったものを、大人になってもひきずり、大人の視点で意匠をこらして再構築することが、「童心をこじらせる」ことだとすると、それは大人な事情で日々満員で社に乗りビジネスをしにいく我々にとって、とても自然な姿で魅力的に映ります。

江本創の幻獣標本も同質の魅力があります。
このような制作のアティテュードは日本人男性が持つ特有のクリエイティビティであるとも思います。

深い歴史考察と作品に込められた思想

作品からもビシビシ伝わりますが、作家本人は大の鎧兜オタでしょう。
歴史考証の分析眼もヲタらしい深さ、否、執念深さがうかがい知れます。
当然のごとく忠実に造形を再現していますが、精神史的な側面の観察も深い。
戦国時代の鎧兜がなぜ人目を引くようつくられるのか、という問いに対する氏なりの回答もなるほどと思います。
歴史だけでなく、自分の創作に対する考えの表明もうまいと感じます。

《サムライ・スタンス 武士のみちたる姿》の作家自身による解説は端的にそれを物語っています。
老境の武士が、現役のころの立派な鎧兜を身にまとい肖像画として残した時の心境を現代の文脈で作品化する、という創作の意図を説明しています。
文章力(文章かなり上手)も相まってすごく納得感がありました。

楽しいものであることは行き過ぎるとエンタメになってしまうのですが、エンタメと一線を画すのは、作家の思想であると思います。
アート鑑賞という小難しいことを抜きに、今風に作家とコミュニケーションできたようなとても良い美術展でした。
雰囲気をお伝えするためにInternet Museumによる紹介動画を引用します。

練馬区立美術館 野口哲哉展 ― 野口哲哉の武者分類図鑑 ―

最後まで読んでいただきありがとうございます!

参考

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