モローじいさんと青年ルオーの胸熱な話

  • Posted on: 2013年11月19日
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本日の行った

展覧会名 モローとルオー 聖なるものの継承と変容
会場 パナソニック汐留ミュージアム
開催期間 2013/9/7(Sat)-12/10(Tue)
展示作家 ギュスターヴ・モロージョルジュ・ルオー
主催 パナソニック 汐留ミュージアム、NHK、NHKプロモーション、東京新聞

一言、2013年ナンバー1の展覧会キタコレです。(かつお調べ)

何が素晴らしいかって、ジブリかっ!ってくらい素敵なじいさんと若者の関係を紹介しているからです。

ただの展覧会は時系列に作品並べて、解説つけて、最後に作家の年表つけて完成なのですが、今回のこの展覧会は違いました。

胸熱な話が散りばめられているのです。

65歳の世を憂いたじいさんとやる気みなぎる20歳の若者との、心温まる師弟関係が、絵と絵の合間に巧みに挿入されています。
言わずもがなの深い精神性を湛えた絵を描く2ですが、こんな裏話があったとは…としれてホクホクしてしまいました。
この展覧会でのモローとルオーの「心の交感」は10月16日の日経新聞の記事でも言及されていました。

1. モロー門下の注目エース

モローはアカデミズムに反している反していないの画壇の論争に辟易し隠遁の生活をしていたところ、教授就任の話を今更感満載で引き受けます。着任したエコール・デ・ボザール(国立の美大)は古典的なデッサン偏重だったのに対し、モローは権威主義や古典をおしつけず、マティエールや色彩の想像力を伝えました。
確かなデッサン技術を持ちながらも、内面のビジョンを活写することが芸術であるとしたモロー先生。その門下からはマティスなどの大家を輩出ましたが、モローが65歳にして中でも注目したのは、入門当時20歳のルオーでした。

ジョルジュ・ルオー《自画像》 1894年 ジョルジュ・ルオー財団蔵

ジョルジュ・ルオー《自画像》
1894年 ジョルジュ・ルオー財団蔵

ギュスターヴ・モロー《自画像》 ギュスターヴ・モロー美術館蔵

ギュスターヴ・モロー《自画像》
ギュスターヴ・モロー美術館蔵

2. 裕福ではなかったルオーの画業を応援

モローは中産階級の出身であり、ルオーはステンドグラス職人という労働者階級の出でした。モローは、資金集めの困難さを理由に画業を諦めないようルオーを必死に励ましました。

3. 弟子愛からくる熱血(?)指導

ルオーは国が主催するローマ賞コンクールの対象に僅差で落選してしまいます。
このローマ賞コンクールは、モロー自身もついぞ大賞をとることができなかったコンクールであった。
ルオーの落選に大して抗議の気持ちを運営側に伝える手段として、「大学をやめたれ!」とアドバイス(?)したのはモローその人であったのです。

しかもそのコンクール作品のため指導は、弟子のデッサンを師匠が書き写して構図の案を複数アイディア出しちゃうほどの熱血っぷりだったそう。(師匠が弟子の絵を模写することは類例がない)

4. ほとばしる往復書簡

最初は「先生!」「優秀な弟子よ」みたいな口調だったのが、
「父のように慕っています!!」「親愛なる息子よ…」と明らかに関係性が深まりまくっているのが垣間見れる往復書簡。
モローの晩年、体調不良を訴えるのに対し、体調を慮るルオーのやりとりがまた胸熱です。

5. モロー美術館をまかせちゃう

愛人や家族に先だたれたため、専心することがあるとすれば、自分の財産や作品をどのように後世に伝えるのか、でした。
自分の創作空間と作品をセットにして保存することを希望したモローは、自身の作品を売ることなくアトリエに残し、建物ごとルオーに託したのです。
こうしてできたモロー美術館の初代館長はもちろんルオーでした。

もちろん展示されている絵も素晴らしい。
もともと、モローもルオーも共通して、深い精神性を絵画に宿す表現主義的画家ではあります。しかし、ハートフルなエピソードを織り交ぜられながらだと、より2人の絵画の奥深さを感じ取ることができるような気がします。

その辺りも展示構成の素晴らしさだと一重に思います。
(監修はモロー美術館の館長さんのよう。その卓抜した監修力は納得。)
モローもルオーも大好きな画家ですが、しかし、これを機にまた新たな一面を知れてホクホクしました。

最後にちょっと2人の深いい話からはそれてしまいますが、以下の絵が個人的にかっこよすぎて鼻血でたので紹介。

ギュスターヴ・モロー《パルクと死の天使》 1890年頃、ギュスターヴ・モロー美術館蔵

ギュスターヴ・モロー《パルクと死の天使》
1890年頃、ギュスターヴ・モロー美術館蔵

パレットナイフを用いた厚塗りのマティエールはフォーヴィズムへの方向性を先取りしています。反面、しっかりとひかれた輪郭線から、デッサンの巧みさはしっかりとみてとれます。この2面性がクールすぎる。。
そして構図もかっこよすぎる。赤い翼で槍を持つ悪そうな天使、黒い馬、佇む女性(パルク:運命を象徴する女神)、ドラマチックな配置。色選びのセンス。かっこよ!

参考

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