アートを語るときに押さえたいポイント3つ

  • Posted on: 2013年3月3日
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本日の一冊

恋人とのデートで、展覧会、コンサート、映画館などは定番コースですよね。
その時、ご自身の感想や見解をイケてる言葉で表現していますか?

美術でも音楽でも映画でも鑑賞した後に、端的にかっこ良く評して見て下さい。
知的な発言に、相手からの評価はぐっと高まるのではないでしょうか。
自分の意見や批評を自分の言葉で表現することは、とてもカッコいいことだと思います。

なぜならアートは語るのも評価するのも難しいからです。
アートとは、知的エリートである芸術家が、難解な思想を具現化したものです。
一癖も二癖もあり、理解するのは至難の業です。
美術史の位置づけ、他の作家の関係、形のない思想哲学を踏まえる必要があります。

そもそもモノとしてのアートを、言葉へと「翻訳」すること自体が本質的に難しいです。
アートを語ることは難しく勇気がいることです。

今日ご紹介する本は、アートを語る、もしくは書くことに示唆の富むアドバイスを与えてくれます。
本エントリでは、書籍のレビューも兼ね、そんな難しいアートを楽しくわかりやすく評するためのポイントを3つにまとめたいと思います。

※紹介する書籍はアート批評の指南本的な立ち位置ですが、このエントリは書籍の本意をお借りしてもっとカジュアルな場面に適応していきたいと思います。

要素に分解する

1点目は鑑賞している作品を、要素へと分解することです。
例えば絵画だったら、下記の要素に分解できるはずです。
材料や顔料は何か?
筆致は荒いか細やかか?
画面の色彩は明るいか?
描かれているものは何か?
描かれている人物は何をしているか?
構図は幾何学的に収まっているか?

などなど。

音楽であれば、リズム、メロディ、和声、音色(楽器)の要素に分解できます。
要素に分解しづらいミニマリズムなどの現代アートの作品も、形態、材料、意味くらいには分解できるはずです。

分解した要素を、それぞれを頭の中ではっきりと言葉にしてください。

例えば、美術館である水彩画を鑑賞する場合。
「カンバスに水彩で描かれているな。
筆致は薄塗りだけど、丁寧に塗っている。
色彩は黄色が基調の全体的に明るい色彩で暖かな印象を受ける。
けど、中央の人物はうつむき、顔は悲しそうに閉口している。」

ざっくりとこういった具合。

本書では、「ディテールにこだわる」ことの重要性を論じています。
芸術家はディテールに並々ならないこだわりがあるからです。
上記の例では、かなり全体ですが、細かな所まで良く観察して脳内で指摘して下さい。

作家が本気を出しているディテールにこちらも真摯に向き合う必要があります。
同時に、あなたも論点を複数だすことで、自分の言いたいことをまずブレスト的に発散することができます。

「引っかかり」に着目する

2点目のポイントは、「引っかかり」に着目することです。
作品を鑑賞し、要素に分解する中で、
「おや、これは他の作品と違って色彩が明るいな」
「うーん、人物の表情はちょっと恐いな」
「あれ、この人物にこの色彩を使うのは不自然だな」
「題名と絵のつながりがイミフだぞ」

というように心の中で、ひっかかりが生じるはずです。

これは作品が他の作品と差異に気づいたということです。
この差異に気づくことができないということは、どんな作品を見ても同じに見えてしまう不幸な感性と言わざるを得ません。

実はあなたが感じる「引っかかり」こそが、作家の独自性であり、歴史的に語る価値のある観点である場合が多いです。
先入観を排して、自分の中の「引っかかり」に注目してみて下さい。

評価の方法を知る

3点目は、意味内容を解釈し評価するための方法を知ることです。
上記の「引っかかり」に対して、
「ここが不思議だよねー」
「ここがいけてるねよねー」

と素直な「ワタシのキモチ」で評価するのも良いでしょう。

評価の手法は「ワタシのキモチ」作戦の他に、簡単なものがあります。
それは「対比」です。
対比で重要なのは、「何と比べるか」「比べる観点は何か」です。

「何と比べるか」は展覧会の他作品や、過去に鑑賞した同作家の作品、はたまた自分の好きなマンガの絵と比べるのも手としてはありです。
ここで知識があると、比較対象が的確になりよりよい考察ができます。
作家の背景や、美術史の基礎知識、社会情勢の知識などです。

「比べる観点は何か」に関しても同様です。
色について比べるのか、形について比べるのか、観点は自由ですが、
前提知識があるとより深い観点で考察できるでしょう。
批評の歴史や、過去の批評家の観点を知ることは非常に重要です。

そういう意味では、なまがつおはアート鑑賞の際には、前提知識があった方が良いと思う派です。
プロ志望の批評指南という立て付けの本書も、言わずもがなです。

まとめ

アートについて語るときに押さえておきたいポイント3つ

  • 要素に分解する
  • 「引っかかり」に着目する
  • 評価の方法を知る

追記

アートに対する説明や批評は難解です。
例えば、ミニマリズムの彫刻家ドナルド・ジャッドの説明をしている下記リンクの文章を読んでみて下さい。

「箱に封じこめられた生」ドナルド・ジャッド

人物の名前やややこしい美術用語が多くいので、なかなか読み進まず、エントリの中盤くらいであくびのひとつふたつができくるのではないでしょうか。
(これでもなまがつお的には、まだ平易に書かれた良い文章だと思われます。)

自分の言葉でアートを説明し批評することは難しく勇気がいることです。
本書でもアート批評の難解さを幾度と強調しています。

しかし、アートの難解さとアートの魅力は表裏一体であるかもしれません。
なぜなら「難解」なアートを少しでも主題に共感できたときは、人は知的好奇心が満たされると同時にちょっとした優越感を得られるからです。

現在、アートに関する文章は難解を極めています。
書いた人は、一部の学者レベルにわかれば良い、と考えているのは正直明らかです。
この現状はアートの発展に対して、喜ばしくないことです。
誰もが、自分の言葉で、作品の良さを語れる必要があるはずです。
なぜなら、「良さを語る」という最も簡単で重要なユーザーのパーティシパントが無いものには今後の発展などありえないからです。

だからこそ、なまがつおは展覧会のレビューをなるべく分かりやすく書きます。
アートに関する書籍や考えをなるべくおもしろく紹介します。
幸い、インターネットで公開する術を知り、読者さまがいらっしゃるので、なまがつおの努力もアートの今後にとって無駄な行為ではないのだと思います。

読んでいただきありがとうございます!

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